500枚入りコピー用紙でイラスト10000枚目指すブログ

『いつまで年齢を言い訳にしているつもり?』 ただ趣味で描いていた絵師が本職を目指します。

岩川イチヨンの日常風景 ~海女の守人、涼風~ (アナログ1枚)

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  白露型駆逐艦十番艦『涼風』は冬場になると『冬だからこそ』のとある任務を担当する。一部の艦娘にとってそれは死活問題であり、最も体調が左右されやすいあの子等はこの時期の涼風には頭が上がらない。

 

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 風吹く岩川。時刻は正午。涼風は母港の片隅にある小屋にいた。ここは海から上がってきた潜水艦が暖を取る海女小屋。涼風が冬場のみ担当している任務とは、『海から上がってくる潜水艦の子達がすぐに暖を取れるように、海女小屋を暖めておく』という内容である。いくら冷たい水の中でも多少は我慢できる彼女らであれ、流石に濡れっぱなしで外にいると体調を崩す。国内南方とはいえ季節は冬。出来るだけ素早く身体を拭くことができて、なおかつすぐに暖を取れるという環境が彼女たちには必須なのだ。週に3回、正午前後にここへ赴き、冷え切った潜水艦の子達を迎え入れるのが、涼風にとっての大事な任務になる。   

 

 残念ながらまだ彼女は前線で戦える力がない(現在錬度27)。存分に暴れられないことにやきもきはするが、これはこれで基地における重要な任務なので彼女自身は不満はないようだ。

 

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 すっかり手馴れた動作でマッチに火をつけ(相変わらず五月雨はまだできない)、下にまとめたおが屑とシュレッダーにかけた書類少々にもぐりこませる。どうやら今日は囲炉裏のご機嫌がいいらしくすぐに炎は広がり、程なくして上に組んだ薪に移ってくれた。ちなみに囲炉裏の機嫌が悪いときは燃料をちょっとたらした紙を入れるのだが、この前分量を間違えたのか大きく燃え上がってしまい、毛先を少し焦がしてしまった。このドジは「演習で直撃した」と理由付けて五月雨には内緒にしている。あの子に笑われたらたまったもんじゃない。

 炎がしっかりしたところで、車輪の付いた物干しを近くに寄せ、籠にまとめてある洗濯された基地指定水着を干す。これは必須ではないのだけれど、潜水艦寮代表『大鯨(たいげい)』は基地の給仕班にも所属しているので、タイミングが悪いとこちらに手が回らないことがある。もちろん涼風はこの仕事も引き受けた。

 

 棚の上にある箱に飲み物も追加し、人数分のバズタオルも用意したところであらかた準備も終わりだ。

「あああ~……おおお~……」

と外見年齢に似つかわしくない低い雄たけびを上げながら、涼風も囲炉裏の前に移動する。手をこすり合わせ火にあてて、その手を腕組みをするように脇の下にもぐらせて、知らない間に奪われた熱を再び生み出すべく縮こまる。あとはあの子等が到着して役割を任せればいい。そこでこの重要な任務は終了となる。

 

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 チロリチロチロ、炎が揺れる。風の名を冠した彼女ではあるが、この自然にまかせ揺れる炎を眺めるのが好きだ。時々海上で見る敵艦から燃え上がる炎とは違う、どこか哀愁漂うこの炎は、他の艦娘を心配させるほど涼風の心を落ち着かせてくれる。普段は元気の塊と表現していいくらいで、小耳に挟んだ話によると、この任務が始まった先月ごろこの様子をたまたま見かけた水無月が「ぼくの知ってる涼風ちゃんじゃない!」と血相変えて司令官に報告したそうだ。

 

 例えるならば『哀愁』という言葉が似合いそうなこの炎は、潜水艦の子達にとってどのようなものなのだろう。涼風たちにとって水中は『死』に最も近い世界になる。その世界に一歩近い潜水艦は、敵に気づかれずひそかに近づき渾身の一撃を叩き込まなければならない。『死』に近い世界の中で緊張にとらわれるその感覚はいったいどういうものだろう。となると、この火は彼女たちにとって『生』なのだろうか。

 

 想像するたびに胃が冷たい何かで撫でられる感覚になるが、残念ながら涼風自身考えるのは得意ではない。今日もある程度煮詰まったらしく、

「なんでえ、あたいらしくねえ……」

と誰もいない海女小屋で一人ごちる。すっかりここまでが定番になってきているのに気づき、最近は苦笑いも追加された。

 

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 四本目の薪を追加したところで

「はっちゃん、流石にあれは酷いでち~」

「漁夫の利もいいところなのね」

という賑やかな会話が聞こえてきた。岩川基地所属のあまんちゅが帰ってきたかなと腰を持ち上げ用意したバズタオルを手に取る。

 

 暫くして少し立て付けの悪い扉が開けられた。

「あああ~!岩川潜水艦隊哨戒部隊ただいま帰還しまふっ!?」

すかさずそのオレンジ頭にバスタオルを投げつける。

「はいはい!お疲れさん!暖まっていきな!」

「最近ちょっとタオル硬くない?少し痛いよ?」

「うるせえ、文句言うんじゃねえ!まあ提督には伝えておくよ」

「涼風さん~、ついでに隊長に新しい水着を申請しますって伝えてくれませんか~?」

「まーた今日は酷くやられたねえ。後で申請書持ってこいよ?」

「ユーも、お願いしたい、です」

「ユー坊もまるゆに書類の書きかた教えてもらいな」

「大丈夫かしら。ユーちゃんの水着、だいぶ修繕に苦労してるみたいだけど」

「そのうち皆と同じ水着になるんじゃないでちか?」

「やったのね!おそろいなの!」

「ちょっと、恥ずかしい……」

「電池は……大丈夫ね」

「おう、ちゃんと充電もしてあるぜ!」

「ヘー、気が利くじゃない?らしくない」

「う、る、さ、い」

 

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 準備したお弁当も食べ終えあらかた雑談し、そろそろ時計は三時を迎えようとしている。今日は特に用事もないのだが、流石に長居もまずいだろうと壁にかけていたダウンジャケットを手に取る。縮こまった身体を背伸びでほぐし荷物を載せてきた台車を引っ張り出す。

「あら、おかえり?」

「あんまり長居してても悪いだろ?間宮でなんか買って五月雨の髪の毛でもいじってらあ」

「気にしなくていいのに」

「今度は、何か差し入れ持ってくるよ。泳いでばっかじゃあ昼飯も足りないだろう?じゃあな」

そう言って後ろの扉に手をかけようとするが、その手は空をかく。突如流れ込んだ寒風に身体を震え上がらせて振り向くと

 

「やあやあおつかれさん、皆の衆。時刻は1500。ここは一つ『テータイム』としゃれ込もうじゃないかね……あれ?涼風もいたのか?どうしたん?」

 

 なにやらビニール袋を手に提げた谷風が呆けた顔をして立ち尽くしていた。

 

「あ、いや、いつもの囲炉裏に火をつける任務さ。これから帰るところ」

「なんだいつまらん。せっかくいるんだからこのままあんたも『テータイム』に参加しな!」

「どうでもいいから早く扉を閉めるでち」

「ささ、入った入った」

といつもの彼女の勢いに珍しく気負けした涼風は、ダウンジャケットの襟をつかまれ海女小屋にズルズルと連れ戻された。特に他の用事もなく、ここで帰る理由もない。どうやら守人の任務はまだ終わらないようだ。そう観念したがまんざらな気分でもない涼風は、まず棚の上にあるやかんを取りに向かう。『テータイム』ならば飲み物が必要だとやかんにミネラルウォーターを入れ囲炉裏の上に引っ掛けた。

 

 活気ある炎を囲い活気ある会話が飛び交う岩川の海女小屋。ここは、先ほど涼風の頭を占めていた『死』のイメージから最もかけ離れた世界なのかもしれない。

 

 

 

了(2852文字)

 

 

 

夏伯礼ってこんな人

hakurei-ka.hatenablog.com

 時々こんな感じで短いお話描いてます書いてます。

 

 

 

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江戸っ子涼風がしんみりしている様子を描きたい